西日本実業柔道連盟
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ラオス指導者派遣事業報告
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訪問記
出発
7月17日(木)関西国際空港から出発。贈呈品や各自の柔道着等荷物がかなり多く重量オーバーを心配したが何とか通関できてひと安心。タイ・バンコクを経由してほぼ予定どおりラオス空港に到着、菊池氏の出迎えを受けた。

菊池正敏氏は九州大学柔道部OBで柔道6段、元間組社員としてネパール、シンガポール勤務の経験もあり、過去5年間ラオスにおいて柔道の普及発展に尽力されてきた人である。ビエンチャン到着後、ラオス柔道連盟ケマサ会長(近大に学び天理教名古屋大教会役員、トヨタ代理店経営、柔道のみならず日本の良き理解者)主催の夕食会で歓迎を受けてホテルに着いたのは深夜であった。
柔道指導
7月18日(金)から21日(月)午前まで、午前と午後の2回、各2時間半の練習指導を、述べ7回実施した。

50名余りの受講者のうち、20歳以上は少なく男女別ではほぼ同数、黒帯は4〜5名、色帯(昇級者)が10名程度、学生が主体でありこの期間は合宿中であった。皆、屈託がない。とても国立とはいい難い競技場の横の体育館に98畳の道場。嘉納治五郎先生の肖像を正面に掲げ、正座・黙想・礼など正しく指導がされているとの印象を受けた。
参加者全員で記念撮影
団員6名と菊池・伊藤両氏
参加者全員で記念撮影
団員6名と菊池・伊藤両氏
ラオスの受講者で英語が話せるのは少数である。指導内容を日本語から英語に訳し、それをラオス語に通訳して皆に伝える。当方は英語もままならぬ上に、初めの内は要領もわからず指導に難渋する場面が多かった。しかし次第に慣れ、身振り手振りや、片言の英語で意思疎通が成り立ってきた。何と言っても「柔道」は国際語なのだということを実感した。またJICAボランティアとして赴任中の伊藤心吾氏が加わってからは、彼が体当たりで憶えつつあるラオス語で主に通訳してくれたが、彼のその情熱たるや感心させられるところ大であった。

指導員達は基本の反復練習からはじめ、内股・払腰・背負投の指導では各指導員の特徴ある技を教えた。強い選手クラスは数名にとどまるが、準備運動等も交替でリーダーを務めるなどスムーズであった。長が幼を指導し、幼も長と同様にできるべく懸命に真似て実践する、そのひたむきさが微笑ましかった。

またトレーニング法についても佐多式前田式などを披露、全員でトライするが、特に佐多式トレーニング法には皆が悲鳴を上げた。寝技の指導では、亀に対し後ろについて返して崩上四方固に入る前田式や、同じく亀に対し横三角から絞め・逆・押さえに入る佐多式等を披露し反復練習させた。
屈託のない少年少女柔道家達
得意技の指導風景
屈託のない少年少女柔道家達
得意技の指導風景
乱取りの相手や5人掛けを行うなどしたが、ちょうど雨季でもあり高温多湿で各指導員は疲れが倍増し、ミネラルウォーターのペットボトルがすぐに空になった。

20日は日曜日のため参加者が60名を越え、稽古にもさらに熱がこもった。砂原指導員は乗せ上手である。背負いを得意とする女子選手を手取り足取り、何度も投げられながら相手をその気にさせるテクニックはさすが。小山指導員は痛めていた膝を悪化させたためラオスでの指導も辛そうであったが、何とか持ちこたえた。

山本団長は審判指導も行った。彼らに練習試合の審判をさせ、その都度気づいたことを注意・指導されたが、厳しくも的確な説明に皆が納得顔であった
表敬訪問と新聞取材
19日には新聞記者が道場に取材に訪れ、団長へのインタビューや練習風景の撮影など行ったが、これは地元英字新聞ビエンチャンタイムズや地元スポーツ誌の記事となった。
指導風景
ソンプー副総裁に寄贈品贈呈
指導風景
ソンプー副総裁に寄贈品贈呈
同紙には21日にラオス国家スポーツ委員会を訪問した記事も掲載された。団長・副団長が菊池氏の付添いでソンプー副総裁に会い、一行が持参した寄贈品の贈呈を行った。ちなみに寄贈品は背筋力計・握力計・リサイクル柔道着・スポーツタオル・スポーツバッグ等である。

その他の表敬訪問先は初日のラオス柔道連盟ケマサ会長のほか、駐ラオス日本大使館の宮下正明大使及びJICAラオス事務所長の高島宏明所長であった。両氏ともお忙しい中にも気さくに談話してくださり、我われの柔道指導訪問を高く評価していただいた。
宮下正明ラオス大使を表敬訪問
宮下正明ラオス大使を表敬訪問
練習後記
ラオスは雨季で初日夕刻に大スコールがあり、激しい雨が体育館の屋根を叩き、指導員の声も届かないほどであった。また日没とあいまって急に暗くなったが、電気配線が故障で電灯がつかない。そんな中、受講者達はわきまえたもので、自分らのオートバイを数台並べてライトアップ、薄暗い中での練習の一幕もあった。

練習後に指導員各人持参のお土産を受講者達に配ると、その喜びようたるや、今の日本の少年少女にない純朴な可愛いさがあった。

最後の練習では、やっと馴染んできた受講者達の顔に別れ難さを覚える。これまで皆無事に、膝や肘など悪いなりにも全員がその役目を全うできたことは幸いであった。日ごろ厳しい山本団長からも、厳しいスケジュールを皆、真面目に頑張って良くこなしたとお褒めがあった。菊池氏も、何人かは既に目に見えて技を会得してきているので、今後も反復練習させ、しっかり指導していきたいと話された。
食事編
朝食は、ホテルのバイキングで野菜類が豊富、ヘルシーでなかなか良い。昼食はいろいろと案内いただいた。ラオス料理は香辛料がきつい。フランスが残した三つの文化の一つだという「パン」、固いフランスパンに野菜やハム・チーズ等をはさんだサンドイッチは豪快で旨い。ちなみに他の二つは「ワイン」と「午睡」だという。

またラオスの生ジュースは最高である。マンゴー・バナナ・パイナップル等お好みのフルーツをその場で絞りたて、稽古の後の水分補給、カロリー補給にもなった。またラオス式ラーメンの日もあった。

夕食は、餃子の美味しい店やバンド生演奏に沸くビアレストラン等、最後の夜はメコン川の遊覧船上で地元ビアラーオや黒ビール、焼酎「ラオ・ラーオ」などを楽しんだ。
観光・帰国
ホテルの温水は生ぬるくバスにお湯を張れないし、湿度が高いため洗濯には苦労した。しかしホテルのマッサージは格安で1時間5米ドルで、筋肉や肩の懲りもすっきりし、疲れも取れて次の稽古に臨むことができた。

日本のタクシーにあたる三輪オートバイの「トゥクトゥク」に乗車してパトゥーサイ(凱旋門)へ。

戦没者慰霊塔だそうだが、その展望台からは360度の大パノラマが展開、爽やかな青空と緑の多い整然とした町並みはどこか中世ヨーロッパを思わせるものであった。
凱旋門からの大パノラマ
凱旋門からの大パノラマ
全ての練習終了後、車でナムグム・ダムへ約2時間のドライブ。1971年、日本などの援助により完成したダムが巨大な人口湖となり実に琵琶湖の半分の広さ、ここでの水力発電はタイに送られ貴重な外貨獲得に役立っているという。雨季としては珍しく晴れ渡った湖上を1時間の遊覧、のんびりとゆられてこれまでの疲れも吹っ飛ぶ思い。
ナムグムダムを背景に
ナムグムダムを背景に
最終日の早朝、お坊さんの托鉢のようすを見学。信者の自宅前での僧侶と信者とのまさに敬虔な場面に出会った。小乗仏教のラオスでは日本の大乗仏教(他力本願)と異なり、信者も自ら努力して、雨の日も風の日も欠かさず3000日もの功徳を積むのだという。

帰国時、ラオス空港に思いがけなくも受講者達約20名が見送りに来てくれた。指導員達は愛弟子とツーショットやジュースで乾杯など名残を惜しむ。素直な明るい笑顔のこの受講者達に幸あれと、また、この中から是非ともオリンピック選手が出て欲しいと思う。
ラオス空港にて見送りの受講者達と
ラオス空港にて見送りの受講者達と
バンコク経由でほぼ予定どおり23日早朝関西国際空港に到着、全行程の無事を感謝し、お互いの健闘を称えあって解散した。(以上、瀬戸口副団長 記)
瀬戸口副団長
瀬戸口副団長
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