西日本実業柔道連盟
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厚生労働大臣杯争奪 第58回全日本実業柔道団体対抗大会   横浜文化体育館
男子第一部 勝ち上がり表(PDF 8KB)>>
順位 団体名
優勝 ALSOK綜合警備保障
2位 了コ寺学園A
3位 旭化成A
3位 日本中央競馬会

男子第1部は、北京オリンピック代表選手が欧米合宿のため欠場し、やや寂しさを覚えた。しかし、今大会を最後に現役引退を表明していた地元神奈川県をホームタウンとする井上康生選手(ALSOK綜合警備保障)が2年ぶりに出場。畳の上の一挙手一投足に館内はざわめき、彼の勝利に歓声は大きくこだました。そして、満場の観客はドラマティックなラストシーンにいつまでも酔い痴れた。かように、井上の、井上による、井上のための今大会は、近年まれにみる大きな盛り上りを見せた。

第1回戦

ダイコロ  5   −   0  了コ寺学園B

(先鋒) 稲澤 真人 4段 (指導1)   松岡 美貴 4段
(次鋒) 稲葉 将太 3段 優勢勝   川山 光 3段
(中堅) 合田 良太 3段 大外刈   黒岩 翼 3段
(副将) 大金 良二 5段 (指導1)   武藤 力也 3段
(大将) 佐々田裕良 3段 送足払   軽部 友和 3段

新日本製  5   −   0  アルゼ

(先鋒) 吉永 慎也 4段 肩固   浅野 雄太 3段
(次鋒) 西山 将士 3段 足車   新垣 信成 3段
(中堅) 森田 祥一 4段 横四方固   保立 勝 3段
(副将) 高橋 和彦 3段 (指導3)   仲田 直樹 4段
(大将) 落合 幸治 3段 裏投   佐久間貴之 3段
第2回戦

2回戦第1試合は、5月の西日本実業柔道団体対抗大会決勝戦の再現。先の大会では、2対1と最小得点差の好勝負を繰り広げた両チーム。しかも3組が同じ対戦となる因縁の戦い。

旭化成A 5   −  0 ダイコロ

(先鋒) 増渕 樹 3段 内股   大金 良二 5段
(次鋒) 松山 毅 4段 支釣込足   佐々田裕良 3段
(中堅) 高井 洋平 4段 反則負   稲澤 真人 4段
(副将) 大鋸 新 5段 横四方固 稲葉 将太 3段
(大将) 齋藤 制剛 4段 合せ技   合田 良太 3段

先鋒戦。左右のケンカ組み手。序盤、大金は右変形で攻め、1分24秒に払巻込で有効を奪う。しかし、大金の変形に抗して組み手厳しく攻める増渕は、2分3秒、組み際、大金が右釣り手を取れない一瞬の隙を衝き、不十分な組み手ながら思い切り良く内股を仕掛け、数歩ケンケンしながら跳ね上げれば、大金は堪え切れず大きく宙を舞って畳に落下。一本。

次鋒戦。巨漢同士の対戦は左右の組み手争いから始まる。佐々田は左奥襟を握って松山を圧迫し、2分13秒には組み合わない松山に指導1。その後は、松山が佐々田にプレッシャーを掛け始め、4分12秒には佐々田に指導1が与えられ、両者ポイントで並ぶ。その後、場外付近で両者がっぷり組み合った所を、松山が左の小さなフェイントから右に大きく振りながら、支釣込足で佐々田を捻り落として一本。松山、西日本実業柔道団体対抗大会で敗れた鬱憤を晴らす。

中堅戦。軽中量級の稲澤は、体重差倍近い高井のパワーに押され続け防戦一方。内股での有効1失点も含め、指導を重ねて3分41秒に反則負を喫す。

副将戦。巨漢大鋸に対し、稲葉は攻撃の暇なく防御体勢を強める。大鋸は稲葉の動きを制して圧迫を強め、1分22秒には右と見せ掛けて右脚を飛ばし、支釣込足で技ありを奪い、そのまま横四方固で一本。

大将戦。左右のケンカ組み手の両者は5月に続く対戦。齋藤は激しく動いて、合田の攻撃の機会を封印する。こうして迎えた2分56秒、互いに釣り手を組み合う中、一瞬、齋藤は左に回り込みながら釣り手で合田の上腕あたりを握り、左に大きく振り回すように内股を仕掛けて、技ありを奪い、そのまま寝技で攻め、最後は横四方固で押さえ切った。

ALSOK綜合警備保障 2   −  2 新日本製鐵

この大会を限りに現役引退を表明している綜合警備保障の井上の登場に館内は騒然となり、報道カメラマンは一斉に動く。対する新日本製鐵は、有力新人2名を加えた陣容で、今年こそは優勝との意欲を燃やす。井上最後の試合との予感から、館内の視線はこの一戦に集中した。

(先鋒) 井上 康生 5段   引分   西山 将士 3段
(次鋒) 今井 敏博 3段 払巻込   森田 祥一 4段
(中堅) 工藤 龍輝 4段   (指導1) 吉永 慎也 4段
(副将) 生田 秀和 5段   優勢勝 高橋 和彦 3段
(大将) 村上 和幸 3段 優勢勝   高橋 徳三 5段

先鋒戦。今年の全日本選手権で対戦した二人。その時は、井上が足払の有効で辛勝したが、この勝負は、左組みの西山が井上の引き手を徹底的に嫌い、井上を組ませない戦法に終始。これには井上も攻める機会を得ず、引分ける。

次鋒戦。今井右組み、森田左組みのケンカ組み手。序盤、両者引き手の攻防。体重に勝る森田が攻勢に進める中、2分43秒、左釣り手を持った左組みの森田が、意表を衝いて右払巻込を仕掛けると、今井はこれを防ぎ、逆に体を浴びせて森田を横倒しに倒して効果。こうして迎えた3分24秒、今度は逆に今井が、組み際に左に回り込みながら払腰から巻込に転じて森田を横転させる。今井、一本勝で綜合警備保障先勝。

中堅戦。中量級の吉永は、一回りも二回りも大きい工藤に臆せず、先手を取って動き回る。工藤は、技を仕掛けて潰れた吉永を上から圧し掛かるが、寝技を警戒してか攻めない。手数の多い吉永に対し、手数のない工藤に遂に4分24秒指導1。その後、リードを許した工藤は反撃に転じるが、残り時間乏しく、ブザーが鳴る。

副将戦。序盤、組み勝った生田は、開始24秒、高橋和の払腰を足払に切り返して効果で先制。その後も生田が内股を連発するが、重い高橋和はこれを受けて崩れず。ところが、徐々に攻勢を続けた生田のスタミナが消耗し、後半は内股を放つも自壊するパターンとなる。生田の消耗が著しくなるに連れ、終盤は高橋和にも技が出始める。そして、時間切れ8秒前に、高橋和が左と見せて左小外刈で生田の右後方に体を浴びせ有効を奪う。新日本製鐵は2点連取し、逆転する。

大将戦。1点リードに拘わらず、高橋徳は序盤から積極的な攻撃を見せる。対する村上はじっくり構えて勝機を伺う。村上は、1分24秒組み際の出足払で高橋徳を横転させ、有効を奪う。一転、追う立場となった高橋徳は、何とか挽回せんと技を繰り出すが、村上はどっしり構えて反撃を許さない。そして、終盤の4分8秒、逆に、焦る高橋徳が大きな動きで足払を仕掛けて戻るところを、村上は体を屈めての内股で高橋を担ぐような体勢で跳ね上げれば、高橋は村上の頭越しに背中から崩れ、技ありとなる。その後、村上は高橋徳の内股をしのいで時間。綜合警備保障が逆転で次に駒を進める。新日本製鐵は惜敗。

了コ寺学園A 4   −  0 旭化成B

(先鋒) 佐藤 武尊 3段 小内刈   木村 純 3段
(次鋒) 森本 翔太   肩車   河野 誠 4段
(中堅) 矢嵜 雄大 5段 (指導1)   辻  玄太 3段
(副将) 竹澤 稔裕     引分 高松 正裕 4段
(大将) 飛塚 雅俊 4段 優勢勝   角地 信太郎 4段

平成管財 2   −  3 日本中央競馬会

(先鋒)       不戦勝 鈴木 龍 4段
(次鋒) 筒井 宏貴 4段 合せ技   佐藤 武尊 3段
(中堅)       不戦勝 片淵 慎弥 4段
(副将) 本郷 光道 3段 大内刈 向川 肇 3段
(大将) 百瀬 晃士 4段   (指導2) 立山 広喜 4段
準決勝戦第1試合

新たな連勝街道を目指す昨年の優勝チーム旭化成Aは、欧州合宿中の泉を欠き、やや寂しい布陣。これに対するは、一昨年旭化成の五連覇を阻んだALSOK綜合警備保障チーム。井上の現役最後の試合となるか、現役最後の試合をもう一つ先まで延ばすのか、館内固唾を飲んで見守る中、稀に見る好勝負が展開された。

旭化成A 1   −  2 ALSOK綜合警備保障

(先鋒) 塘内 将彦 5段   引分   村上 和幸 3段
(次鋒) 大鋸 新 5段   支釣込足 生田 秀和 5段
(中堅) 齋藤 制剛 4段   引分   今井 敏博 3段
(副将) 高井 洋平 4段 内股 小野 俊教 3段
(大将) 谷口 徹 3段   横四方固 井上 康生 5段

先鋒戦。体格で劣る塘内は、右組みから容易に村上の組み手を許さず、先手先手と技を仕掛ける。一方、時折引き手を掴んだ村上は、ここぞとばかりに内股等で塘内を揺さぶる。このような攻防を5分間続け、引分ける。

次鋒戦。両者右組み、大鋸が生田の奥襟を押さえに来たところを、生田は右釣り手を放し、大鋸の右釣り手を上から押さえながら、右支釣込足から体を捻ると、大鋸の巨体は前方にゴロンと回転し背中から沈む。生田の試合開始11秒の一本勝で、綜合警備保障が先制点を奪取。

中堅戦。リードを許した旭化成、齋藤は試合開始早々から積極的に攻める。長身の今井は齋藤の奥を右手で叩いて押さえ付けようとするが、齋藤はこれを巧みに捌き、逆に今井を捕え、前に出ながら攻める。また、齋藤は、再三もつれて畳に伏せた今井を寝技で攻める。齋藤は終始押し気味に進め、時間切れ寸前には、今井の姿勢に対し審判協議があるも、宣告なく時間。今井、逃げ切る。

副将戦。高井の巨体の前に、ひときわ小さく見える小野は、序盤は高井の圧力をしのいでいたが、徐々にスタミナを消耗、中盤に入ると棒立ちになり始め、高井の組み手を許す。こうして迎えた2分52秒、高井は試合場中央付近から、大内刈で小野を追い込みながら、場外際で右に回り込んで左内股に変化しつつ巻込めば、小野は肩口から倒れかかって背中で着地し一本。旭化成が同点に持ち込み、勝負は大将戦に持ち込まれる。

大将戦。現役最後の舞台に立つ井上に対するは、中量級ながら今年の全日本選手権で、大型選手を次々に降し堂々ベスト8入りした谷口。場内の大きな声援を背に、井上はじっくり勝機を伺うが、谷口は徹底的に引き手を許さず、組まない体勢から、タックル、肩車で井上を揺さぶる。谷口は井上の内股も、瞬間に体を浴びせて不発に終わらせる。このまま谷口の逃げ切りを許し、高井との代表戦を予想させ始めた残り31秒、井上は踏み込んだ右脚を翻して、小外掛で谷口を転がして有効を奪う。その直後、素早く横四方固に押さえ込んで一本。井上が大将戦で綜合警備保障の決勝進出を導く。

準決勝戦第2試合

体重120kg以上の重量級をずらりと並べた日本中央競馬会に対し、軽重量級中心でチーム編成した了コ寺学園A。しかし、勢いは緒戦の2人欠場の平成管財戦で辛勝の日本中央競馬会より、緒戦を4−0で制した了コ寺学園Aに強く感じる。

了コ寺学園A 3   −  1 日本中央競馬会

(先鋒) 中野 竜 3段 優勢勝   立山 広喜 4段
(次鋒) 矢嵜 雄大 5段   引分   片淵 慎弥 4段
(中堅) 佐藤 武尊 3段 (指導1)   向川 肇 3段
(副将) 森本 翔太   横四方固 佐藤 充弘 3段
(大将) 飛塚 雅俊 4段   大外刈 鈴木 龍 4段

先鋒戦。雲を衝く巨体の立山に対し、同じ左組み手の中野は、立山に組み手十分を許さず、間合いを十分取って対す。先勝を意識して意気込む立山は、中野を上から強引に押さえ付けようとした3分55秒、中野は低い屈んだ姿勢から左手を立山の右内膝に当て、右引き手で立山の左前に引きおろすと、立山の巨体が左に横転する。中野が相撲の内無双のような手技で有効を先取。リードを許した立山は、挽回を期して中野を上から押さえ付ければ、中野は防戦一方になり、残る12秒に中野に指導1。しかし、立山の反撃もここまで。中野、殊勲の先勝。

次鋒戦。これまた、体重差の大きい両者。片渕は勢い込んで矢嵜に襲い掛かるが、矢嵜は巧みにこれを受け流す。矢嵜は技を仕掛け、潰れた片渕に、時間稼ぎと見紛うばかりに寝技でじっくり攻める。このような展開に終始し、結果は矢嵜が片渕に柔道をさせずに逃げ切る。

中堅戦。佐藤右組み、向川左組みのケンカ組み手。時折、佐藤が巴投で寝技や組み際の小内刈、一本背負投で攻めるが、総じて単調な流れ。終盤になり、一層消極的となった向川に残り15秒、指導1。了コ寺学園Aが決勝戦進出に王手を掛ける。

副将戦。90kg級の森本は右組みから、150kgの巨漢佐藤に対し、果敢に攻める。左組みの佐藤は、森本を組み止められず持て余し気味のところ、1分3秒、森本が右脚を佐藤の左脚横に踏み出し、体を捨てながら横から肩車に担ぎ、佐藤を横転させれば、有効となる。森本はそのまま横四方固に入り一本。了コ寺学園A、見事2年連続決勝戦進出を果たす。

大将戦。勝負の決した大将戦であるが、鈴木は一矢報いんと飛塚を攻める。飛塚は鈴木の懐に飛び込もうと機を伺うも果たせず。1分31秒には鈴木の手を組み続ける飛塚に指導1。その後、試合は鈴木が押し気味に流れる中、鈴木が小内刈から飛塚を振り回し、飛塚の両膝が着いた所を委細構わず、2分24秒右大外刈で叩き付けて一本。

決勝戦

接戦を制して勝ち上がったALSOK綜合警備保障は、いよいよ井上の最後の舞台。一方、念願の初優勝を狙う了コ寺学園Aは静かな闘志を胸に秘めて最終決戦に挑む。館内は井上の最後の雄姿を目にして異常な興奮。試合場前列にはテレビカメラがずらりと並び、異様なムードで試合が開始される。

ALSOK綜合警備保障 2   −  1 了コ寺学園A

(先鋒) 村上 和幸 3段 優勢勝   森本 翔太  
(次鋒) 今井 敏博 3段   引分   飛塚 雅俊 4段
(中堅) 井上 康生 5段 横四方固   佐藤 武尊 3段
(副将) 小野 俊教 3段   (指導2) 矢嵜 雄大 4段
(大将) 生田 秀和 5段   引分   中野 竜 3段
先鋒戦。村上左、森本右のケンカ組み手。開始33秒、村上はフェイント気味に左脚を右に振ると見せて小外刈で有効を奪う。村上は早々のポイント奪取で慎重になり、以後は受けに回る。追う森本も攻撃を仕掛けるが決め手を欠く。結局、村上の逃げ切りが功を奏し、綜合警備保障が先取。

次鋒戦。右組み同士、同じような体型の両者、中盤までは相譲らぬ攻防を見せる。後半は、飛塚が盛んに森本の懐に飛び込もうと機を伺うが、森本も充分承知してこれに備え、飛塚の目論見も不発に終わる。今井は無理をせず、結局、飛塚の先鋒戦の失点を挽回する試みも果たせず、引分ける。

中堅戦。井上の登場に館内は異常な興奮。大歓声が館内に轟く。序盤は、井上の引き手を嫌気した佐藤が巧みにかわす。佐藤が時折仕掛ける巴投を、井上は難なく捌く。中盤は、井上が得意の組み手に組み止めるが、何故か逡巡して技が出ない。しかし、3分25秒には満を持して伝家の宝刀内股を放つと、佐藤は大きく宙に舞う。しかし、引き手が離れて肩からの着地にとどまり、効果のみ。その後、佐藤は井上の圧力に押されての苦し紛れの巴投に体を捨てると、井上は寝技で反応。伏せた佐藤を巧みに裏返して上四方固に押さえ込む。そこで佐藤はパワーを見せ付け、7秒で解く。しかし、井上は巴投に体を捨てる佐藤を再び裏返し、4分31秒に肩固で押さえる。館内は大音声で揺れるほどの興奮の坩堝と化す。その後、横四方固に変化し一本。井上、最後の試合を一本勝で飾ると共に、チームの2年ぶりの優勝を大きく引き寄せる。

副将戦。両者左組み同士。序盤は両者互角で相譲らず。しかし、守る側と追う側の違いか、徐々に矢嵜の攻勢で、小野は防御の姿勢が強まり、3分13秒に続き4分50秒に指導2まで受ける。防御の小野は指導2に止めて、時間。

大将戦。生田右組み、中野左組みのケンカ組み手。生田は中野に充分に組ませながら、得意の内股で再三中野を宙に舞わせるが、今一つ決められない。生田は次第に疲労の色を見せ始め、技を繰り出すものの自ら潰れて畳に伏せる。しかし、中野にこれを攻める手立てなく、最後は安全運転に切り替えた生田を追い込めず、引分け。結局、中堅井上の一本勝が勝負の決め手となり、綜合警備保障が2年ぶり、3回目の日本一。

表彰式終了後は、マスコミは井上に殺到。井上は観客席に大きく手を振り、頭を下げて謝意を表す。館内のファンは去り行く井上に尽くせぬ名残を惜しむ。

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