さて、実業柔道の目的は、柔道を通じて、社会人としての人格を磨き、相互の友好親善を図ることにあります。本連盟は、この目的にご賛同いただいた会員企業、関係各位のご支援、ご指導により、年々充実発展を遂げてまいりました。
おかげさまで、いろいろな場で当連盟所属の選手諸君が、大いに活躍し、社会の注目を集めております。例えば、昨年のカイロ選手権においては、金メダル3個を含む5個のメダルを獲得し、また、本年の全日本選手権においても、10余名の選手が出場、多くの選手が上位に進出しております。このように、当連盟は日本柔道発展の重要な一翼をになっておりますが、同時にこのような輝かしい実績は裾野の拡大なくしてなしえるものではないと思います。
昨今、わが国の産業構造・経済情勢の変化にともない、スポーツに対する企業の姿勢も大きく変化してきております。職場にクラブがなく市井の道場で汗を流し、試合に出場する機会に恵まれない若者に対しても、当連盟はクラブチームとして参加機会があることを訴えるなどして、参加を促し、また、大会地元の少年柔道選手への対抗試合の機会の提供など、柔道の底辺拡大に努めてまいりました。こうした広くしっかりした土台のうえにこそ、高き頂きを築いていくことができると考えております。
ご高承のとおり、柔道は武士の、生死を決する格闘術であったものを、一定の場所と時間の枠の中にルール化したものであります。こうした歴史を有する柔道が、その内容において極めて闘争性の高い過酷なものとなることは当然でありますが、それゆえに試合における礼法というものが他のスポーツに比べて強く要求されるのではないでしょうか。勝者のガッツポーズは人間としての自然な感情の発露ではありましょうが、同時に、礼法という形に高められた相手に対する思いやりの情は、柔道を通じて日本が世界に発信できる重要な精神文化の一つであると存じます。選手諸君の活躍はもとより、いろいろな啓蒙活動をはじめ、当連盟の諸活動が、そのような柔道の高い精神性の普及につながればと願う次第です。
本連盟の活動は、主役はもちろん現役選手諸君でありますが、会員企業・チームの役員・指導者の方々や、広告賛助をいただく企業・個人の方々、ならびに熱心に取材をしていただく報道記者の方々等、多くの皆様に支えられて、成り立っております。加えて、連盟役員である諸先輩の情熱と、ボランティア活動があってこそ、大会の円滑な運営、運営基盤の充実等、本連盟の諸々の活動や改革が実現されてきたと申し上げても、過言ではないと存じます。
関係各位の日頃のご厚誼、ご支援に改めて御礼を申し上げますとともに、本連盟ならびに柔道の発展のため、益々のご指導、ご協力をお願い申し上げまして、会長就任のご挨拶といたします。 |